相続放棄と賃借物件の解約

 相続放棄を行うと,借金などのマイナスの財産を受け継がなくてよくなります。

 その代償として,不動産,預貯金などのプラスの財産も受け継ぐことができなくなります。
 

 このような特徴を持つ相続放棄という制度ですが,相続放棄を行う場合,注意すべき点があります。
 それは,遺産には一切手を付けてはならないということです。
 
 たとえば,亡くなった方の預貯金を払い戻して,そのお金で旅行に行ったり,物を買ったりすれば,もう相続放棄はできなくなってしまいます。

 
 では,亡くなった方が住んでいたマンションなどの,賃借物件を解約することはできるのでしょうか。

 私がよく相談を受ける内容として,「大家さんから家を引き払ってほしいと言われて,どうしたらいいか分からない」といったものがあります。
 確かに,大家さんからすれば,早く部屋を引き払ってもらって,新しい人に部屋を貸したいと思うでしょう。
 そんな大家さんのために,家族の責任として,家の中にあるものを片付け,部屋の契約を解約するくらいは・・・,と考える方も多いです。

 
 しかし,部屋の解約という行為は,通常「解約する権限を持つ人」でなければできない行為です。
 亡くなった方のご家族が部屋の解約をすれば,それは「解約する権限」を相続した上で,その行使をしたと考えることもできます。
 
 この点について判断した裁判例はなく,実際どうなるのかは裁判をしてみないとわかりませんが,リスクを避けるために,部屋の解約はするべできはありません。
 他にも,たとえば携帯電話,電気,ガス,水道等の解約はどうなのかという難しい問題があります。

 相続放棄でお悩みの方は,一度弁護士にご相談することをお勧めします。

相続放棄とはどのような制度か

 相続放棄とは,一切の財産を受け継がないための制度です。
 人が亡くなれば,その遺産は相続人が受け継ぐことになりますが,「借金の方が多いから,遺産を受け継ぎたくない」といった場合に相続放棄を行います。

 たとえば,名古屋に自宅を持っている方が亡くなれば,その自宅は相続人が受け継ぐことになりますが,もしその方が5000万円の借金をしていた場合,相続人はその借金についても受け継ぐことになります。
 相続放棄をすれば,名古屋の自宅を受け継ぐことはできなくなりますが,5000万円の借金を受け継がなくてもよくなります。
 また,借金はないけれど,不要な遺産がたくさんあるといった場合にも,相続放棄は便利な制度です。
 たとえば,亡くなった方が田舎の山林や畑などを所有している場合,それらの土地は売ることが難しく,財産的価値がないというケースも多いと思われます。

 それらの財産を相続してしまうと,自分が亡くなった後に,自分の子どもに山林や畑などを相続させてしまうことになり,迷惑をかけてしまうかもしれません。
 
そういった事態を避けるために,遺産に不要な山林や畑がある場合,相続放棄をしておくとよいでしょう。

 相続放棄をする場合,いくつか注意しなければならないことがあります。

 まず,相続放棄は3か月以内に手続きを行う必要があります。
 3か月のスタートは,ご家族が亡くなったことを知り,さらに自分が相続人であることを認識した時です。
 そのため,たとえば長男が父親の臨終に立ち会えば,その時点から3か月がスタートしますし,疎遠で何十年も会っておらず,父親が亡くなったことを長男が知らなければ,3か月はいつまで経ってもスタートしません。

 

 また,亡くなった方の預貯金を払戻して使ったり,亡くなった方の物を売ったりした場合,相続放棄ができなくなる可能性が高いので気を付けましょう。
 その他にも,相続放棄には細かいルールがたくさんありますので,相続放棄を検討されている方は弁護士に相談することをお勧めします。
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