預貯金債権の仮払い制度がスタート

 突然家族が亡くなった場合,お通夜,お葬式,初七日等のためにお金が必要になるケースがあります。
 もし,亡くなった方の預貯金を使うことができれば,急いでお金を用意する必要がなく便利です。
 

 しかし,亡くなった方の預貯金は,遺産分割の対象であるため,一部の相続人が勝手に払い戻すことはトラブルの元になってしまいます。
 また,銀行は預貯金の名義人が亡くなったことを知ると,預貯金を凍結させてしまい,相続人全員の同意がないと,払戻ができません。
 

 そのような不都合を解消するため,相続法が改正され,一部の相続人が自己の判断だけで,亡くなった方の預貯金の一部を払い戻すことができるようになりました。
 
 払い戻すことができる金額は,預貯金の金額の3分の1に法定相続分を掛けた金額ということになります。

 たとえば,亡くなった方が名古屋のA銀行に600万円の預金を預けていた場合で,相続人が2人いるケースを考えてみましょう。
 まず,預金の3分の1は200万円です。
 次に,相続人が2人のため,法定相続分は2分の1ということになります。
 その結果,各相続人は100万円をA銀行から引き出すことができます。
 

 ただし,引き出すことができる限度は150万円までなので,仮に上記の例で名古屋のA銀行に6000万円の預金があった場合,上記の計算式でいえば,各相続人は1000万円ずつ預金を引き出すことができますが,上限は150万円であるため,150万円までしか引き出すことはできません。

 

 もし,預貯金の仮払い制度を利用した場合,その引き出した預貯金は後の遺産分割でどのように扱われるかは,別途法律の規定があります。
 後々のトラブルを防ぐためには,仮払い制度の利用の前に,弁護士に相談することをお勧めします。

相続放棄とはどのような制度か

 相続放棄とは,一切の財産を受け継がないための制度です。
 人が亡くなれば,その遺産は相続人が受け継ぐことになりますが,「借金の方が多いから,遺産を受け継ぎたくない」といった場合に相続放棄を行います。

 たとえば,名古屋に自宅を持っている方が亡くなれば,その自宅は相続人が受け継ぐことになりますが,もしその方が5000万円の借金をしていた場合,相続人はその借金についても受け継ぐことになります。
 相続放棄をすれば,名古屋の自宅を受け継ぐことはできなくなりますが,5000万円の借金を受け継がなくてもよくなります。
 また,借金はないけれど,不要な遺産がたくさんあるといった場合にも,相続放棄は便利な制度です。
 たとえば,亡くなった方が田舎の山林や畑などを所有している場合,それらの土地は売ることが難しく,財産的価値がないというケースも多いと思われます。

 それらの財産を相続してしまうと,自分が亡くなった後に,自分の子どもに山林や畑などを相続させてしまうことになり,迷惑をかけてしまうかもしれません。
 
そういった事態を避けるために,遺産に不要な山林や畑がある場合,相続放棄をしておくとよいでしょう。

 相続放棄をする場合,いくつか注意しなければならないことがあります。

 まず,相続放棄は3か月以内に手続きを行う必要があります。
 3か月のスタートは,ご家族が亡くなったことを知り,さらに自分が相続人であることを認識した時です。
 そのため,たとえば長男が父親の臨終に立ち会えば,その時点から3か月がスタートしますし,疎遠で何十年も会っておらず,父親が亡くなったことを長男が知らなければ,3か月はいつまで経ってもスタートしません。

 

 また,亡くなった方の預貯金を払戻して使ったり,亡くなった方の物を売ったりした場合,相続放棄ができなくなる可能性が高いので気を付けましょう。
 その他にも,相続放棄には細かいルールがたくさんありますので,相続放棄を検討されている方は弁護士に相談することをお勧めします。
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