遺産管理費用は誰が負担するのか

 遺産の中に名古屋のマンションといった不動産がある場合,そのマンションは遺産として,遺産分割の対象になります。
 しかし,遺産分割手続きは,話し合いがスムーズに進まない場合,何年もかかってしまう場合があります。

 

 そうなると,マンションの維持費として,固定資産税や管理費などを誰かが支払う必要があります。
 このような費用を遺産管理費用といいますが,仮に,その費用として30万円が必要になった場合,この30万円は誰が負担することになるのでしょうか。
 

 法律的には,亡くなった後に発生した費用は,相続人が全員平等に負担しなければならないことになっています。
 なぜなら,遺産分割によって,マンションが誰の所有物になるのかが決まるまでは,相続人全員がマンションを共有していると考えられているため,マンションの維持に必要な費用は,所有者である相続人全員が平等に負担すべきだからです。

 
 とはいえ,遺産分割でもめているような場合は,誰かがとりあえず立て替えておくというケースも多いかと思います。

 

 そのような場合,誰がマンションの維持費を負担するのかについても,遺産分割協議の中で話し合われることが多く,たとえばそのマンションを取得する人が,30万円の維持費についても負担するといった合意がなされる場合があります。
 しかし,マンションを取得する人が,この30万円を支払いたくないと主張した場合,非常に手続きが大変になります。
 

 実は,亡くなった後に発生した費用は,遺産の一部とは考えられていないため,遺産分割手続きの中で扱うべきではないということになっているのです。

 

 そのため,もし30万円の維持費を払う人が決まらなかった場合,それはいったん棚上げにして,遺産分割手続きを進めることになります。
 

 そうなった場合,マンションの維持費の30万円については,別途裁判を提起して請求することになります。
 遺産分割に加えて裁判まですることになれば,紛争が長期化し,精神的にもかなり辛くなってくるため,できるだけ遺産分割の中で費用負担の合意も取り付ける必要があります。

 

 一度遺産分割でもめてしまうと,収拾がつかなくなる可能性があるため,できるだけ早い段階で弁護士に相談し,遺産を巡る争いを早期に終わらせることが大切です。
 

怪しい預貯金の引き出しがある場合の相続

 遺産を分ける手続きを行う場合,亡くなった方の通帳を見ると,怪しい引き出しが見つかるときがあります。
 たとえば,お父さんが入院していて,特にお金を必要としていないはずの時期に,毎週50万円が引き出されている場合等です。

 

 亡くなった方の通帳を管理していた人(たとえば長男)が,引き出したお金を何に使ったのか説明し,正当な理由があれば何も問題はありません。
 しかし,長男が,「私は何も知らない。引き出したことなどない」と主張したり,「引き出したお金は,お父さんのために使った」,「お父さんに手渡ししたから,何に使ったのかは知らない」と主張してきた場合,遺産を分ける手続きが紛糾する場合があります。
 長男がこのような主張を続ける場合,怪しい預貯金の引き出しを巡って,裁判をすることになります。

 

 その裁判では,まず長男が預貯金を引き出したという事実を証明する必要があります。
 そのためには,長男がお父さんの通帳,印鑑,キャッシュカード等を管理していたことや,お父さんが入院中で,預貯金を引き出すことができなかったこと等を主張することになるでしょう。

 たとえば,名古屋でお父さんが入院しているのに,名古屋以外のATMから預貯金を引き出されている場合,少なくともお父さんが預貯金を引き出したわけではないことが分かります。
 そのATMが長男の家の近くだということになれば,長男が預貯金を引き出したことを証明する一つの事情になります。
 次に,長男が預貯金を引き出したとして,お金をどのように使ったのかが問題になります。
 仮に,お父さんの入院費用や,介護の費用のために預貯金を引き出したのであれば,それはお父さんの預貯金をお父さんのために使ったと言えるため,不正な預貯金の引き出しとは言えないでしょう。
 他方で,毎週50万円の預貯金が引き出されていれば,通常そのような大金が必要になることは考えにくく,長男が自分のために預貯金を引き出したことを示す事情の一つになります。

 

 このように,怪しい預貯金の引き出しは,様々な事実や証拠によって,それが不正な預貯金の引き出しであることを証明する必要があります。
 そのため,亡くなった方の通帳に怪しい預貯金の引き出しがある場合は,弁護士に相談することをお勧めします。

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