怪しい預貯金の引き出しがある場合の相続

 遺産を分ける手続きを行う場合,亡くなった方の通帳を見ると,怪しい引き出しが見つかるときがあります。
 たとえば,お父さんが入院していて,特にお金を必要としていないはずの時期に,毎週50万円が引き出されている場合等です。

 

 亡くなった方の通帳を管理していた人(たとえば長男)が,引き出したお金を何に使ったのか説明し,正当な理由があれば何も問題はありません。
 しかし,長男が,「私は何も知らない。引き出したことなどない」と主張したり,「引き出したお金は,お父さんのために使った」,「お父さんに手渡ししたから,何に使ったのかは知らない」と主張してきた場合,遺産を分ける手続きが紛糾する場合があります。
 長男がこのような主張を続ける場合,怪しい預貯金の引き出しを巡って,裁判をすることになります。

 

 その裁判では,まず長男が預貯金を引き出したという事実を証明する必要があります。
 そのためには,長男がお父さんの通帳,印鑑,キャッシュカード等を管理していたことや,お父さんが入院中で,預貯金を引き出すことができなかったこと等を主張することになるでしょう。

 たとえば,名古屋でお父さんが入院しているのに,名古屋以外のATMから預貯金を引き出されている場合,少なくともお父さんが預貯金を引き出したわけではないことが分かります。
 そのATMが長男の家の近くだということになれば,長男が預貯金を引き出したことを証明する一つの事情になります。
 次に,長男が預貯金を引き出したとして,お金をどのように使ったのかが問題になります。
 仮に,お父さんの入院費用や,介護の費用のために預貯金を引き出したのであれば,それはお父さんの預貯金をお父さんのために使ったと言えるため,不正な預貯金の引き出しとは言えないでしょう。
 他方で,毎週50万円の預貯金が引き出されていれば,通常そのような大金が必要になることは考えにくく,長男が自分のために預貯金を引き出したことを示す事情の一つになります。

 

 このように,怪しい預貯金の引き出しは,様々な事実や証拠によって,それが不正な預貯金の引き出しであることを証明する必要があります。
 そのため,亡くなった方の通帳に怪しい預貯金の引き出しがある場合は,弁護士に相談することをお勧めします。

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