お葬式の費用は誰が負担するのか

 ご家族が亡くなると,その遺産を相続人で分け合うことになります。
 もっとも,遺産を分け合う話し合いをするのは,ご家族が亡くなってから,しばらく時間が経ってからの場合が多いでしょう。

 その前に,ご家族で話し合うことがあるとすれば,お葬式の費用等の話ではないでしょうか。

 よくあるパターンとして,長男がとりあえずお葬式費用を立て替えておき,後日費用を遺産から出すという場合があります。

 相続人間で,特にもめることがなければ,遺産からお葬式の費用を出して,残った遺産を分け合うことになります。
 しかし,遺産を巡って相続人間で争いが生じている場合は,お葬式の費用はやっかいな問題になることがあります。

 たとえば,次男が「名古屋市内でもっと安い業者もあったし,無駄なオプションも多かった。だからお葬式の費用は長男が払うべきだ」,などと主張してきた場合,誰がお葬式の費用を負担することになるのでしょうか。

 実は,お葬式の費用については,喪主が負担すべきという考え方が一般的です。
 なぜなら,お葬式は,喪主が自己の責任で行った行為と考えられるため,お葬式を主宰した喪主がその費用を負担すべきと考えられているからです。

 もっとも,一定の場合は相続人が共同で負担すべきだと裁判所が判断した事例もあります。
 このように,お葬式の費用をどうするかは,難しい法律の知識が要求されるため,お葬式の費用でもめた場合は弁護士に相談することをお勧めします。

遺留分減殺請求を行う場合に確認すべきこと②

1 遺留分の基礎となる財産を確認する
  遺留分を算定するには、被相続人の財産を確定する必要があります。
  遺留分の額を算定するための基礎となる被相続人の財産は、①相続開始時に被相続人が有してい
 た財産(遺贈を含む)の価格に、②生前贈与の額を加え、③債務を控除したものです。
  以下では、②の生前贈与について詳しくみていきます。

(1)相続開始前になされた贈与
   ②の生前贈与については、相続開始前の1年間になされたものに限られます。
   また、この1年間の基準時は贈与契約時であると考えられています。

(2)遺留分権利者を侵害することを知ってなした贈与
   遺留分を侵害することを知ってなされた贈与については1年間という期間制限はありませ
  ん。
   この「遺留分権利者に損害を加えることを知って」の意味は、遺留分権利者を害する目的まで
  は必要ではなく、贈与契約時に遺留分権利者の遺留分を侵害する事実を認識していれば足り、他
  方で、将来も遺留分の侵害が継続することを予見していたことが必要とされています。
   なぜなら、遺留分を侵害するか否かは、相続が開始してから決定されるため、贈与の時点で遺
  留分を侵害していても、その後に財産が増加するから大丈夫だと思って贈与したのに加害の意思
  があるとするのは、被相続人の生前処分の事由を制限することになるためです。

 (3)不相当な対価をもってした有償行為
   被相続人が不相当な対価をもってした有償行為は「当事者双方が遺留分権利者に損害を加える
  ことを知ってしたものに限り」贈与とみなされます。
   たとえば、名古屋の5000万円の価値がある不動産を300万円で売却した場合などは、不動産
  の贈与とみなされる可能性が高いと思われます。
   また、ここでいう「有償行為」とは、売買のような契約に限らず債務免除のような単独行為も
  含まれます。
 (4)特別受益
   共同相続人の中に、婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者がある
  ときは、その贈与は時期を問わず遺留分算定の基礎となる財産に加算されます。
   もっとも、この点は法改正がなされ、相続開始時から10年のうちになされた贈与のみが遺留
  分の算定の基礎となる予定です

 2 まとめ
   以上のように、遺留分の基礎となる財産を確定させるのは難しい法律判断が必要なため、ど
  のような財産が遺留分算定の基礎となるのかは弁護士に相談するのがよいでしょう。