相続人としての地位を失うケース②

 相続人としてあるまじき行為をした人は,相続権を失います。

 たとえば,長男が父親を強迫し,「名古屋の自宅と預貯金を長男に相続させる」といった内容の遺言書を無理やり書かせた場合,その長男からは相続権をはく奪すべきです。
 

 また,父親がすでに遺言書を作成している場合に,長男が父親を強迫し,無理やり遺言書の内容を変更させたような場合も,長男は相続権を失います。

 
 相続権を失うケースで,最も多い類型の一つが遺言書を偽造したり,変造するケースです。

 
 偽造とは,たとえば長男が父親の名前を使って遺言書を作成し,まるで父親が作ったかのような遺言書を作成することをいいます。
 変造とは,父親が作った遺言書の一部を勝手に変更することをいいます。

 
 いずれものケースでも,長男に遺産を与えることは不当であるため,長男は相続権を失います。
 
 次に,遺言書を破壊してしまう行為についても,相続欠格に該当します。
 たとえば,長男が父親の遺言書を家の中で見つけたが,自分に不利な内容であったため,破り捨ててしまったり,燃やしてしまったような場合が想定されています。
 
 これと似たような類型として,遺言書を隠してしまった場合も,相続欠格に該当します。
 せっかく父親が書いた遺言書があるのに,それを誰も見つけることができないように隠してしまえば,それは遺言書を燃やしてしまうのと同じということです。
 
 このように,「そんな悪いことをした相続人には,遺産を渡すべきではない」と言えるようなケースについては,悪いことをした人の相続権がはく奪されてしまいます。
 特に,遺言書を見つけた方は,相続欠格に該当しないように,遺言書を慎重に扱う必要があります。
 
 また,遺言書を見つけた方や,遺言書を預かっている方は,裁判所に遺言書を提出する等,様々な手続きが必要になりますので,一度弁護士に相談することをお勧めします。