所有権と占有権の違い

 所有権という言葉は、法律の世界でもよく出てきます。

 法律の世界の言葉は、日常的に使われている言葉と、意味が全然違うときがありますが、所有権という言葉については、日常用語で使われている意味と、あまり違いはありません。

 
  所有権を持っている人(所有者)は、その物を使ったり、貸したり、売ったりすることができます。

 つまり、その物を基本的に好きにできる権利のことを所有権と呼んでいます。


 他方、法律の世界では、占有権という言葉が出てきます。

 占有権という言葉は、あまり日常的に使われることはありませんが、どのような意味なのでしょうか。

 占有権とは、物を自分の支配下に置いている状況の事を指すというイメージです。


 たとえば、友達からボールペンを借りた場合を考えてみましょう。

 友達からボールペンを借りた場合、あくまで借りただけなので、そのボールペンの所有権は友達が持っています。


 他方、ボールペンを借りた人が、実際にそのボールペンを使って字を書いている時、そのボールペンは、借りた人の支配下にあると言えます。

 ボールペンを借りた人は、あくまで借りているだけなので、そのボールペンを勝手に誰かに売ったり、貸したりすることはできません。

 ボールペンを借りた人は、ボールペンを自分の支配下に置いていますが、自分の好きなようにボールペンを処分することはできないのです。

 

 もう1つ具体例を出します。

 社会人になって、マンションで一人暮らしをすることになった場合、そのマンションの所有権は、あくまで大家さんが持っています。

 他方、その家に住んでいる人は、その家を自分の支配下に置いているため、その家を占有権を持っています。

 マンションを借りた人は、その部屋を支配下に置いているため、自分以外の人が勝手にマンションの部屋に入ろうとしたら、追い出すことができます。

 
 しかし、マンションを借りた人は、マンションの所有者ではないため、マンションを売却したり、誰かに貸したりはできません。


 何となく、所有権と占有権の違いについては、イメージしていただけましたでしょうか。

 一言で言うなら、所有権は、「自分の物なんだから、どうしようと自分の勝手だ」という権利で、占有権は「一定の範囲で他人の所有物を利用することができる権利」というイメージです。


 所有権について、少しだけ補足しておきます。

 所有権は「自分の物なんだから、どうしようと自分の勝手だ」というイメージだとご説明しましたが、当然法律上の制限があります。

 たとえば、不要になった家電を、道端に捨てると不法投棄になってしまいます。

 
 また、人間のように、そもそも所有権の対象になり得ない存在もあります(厳密には、奴隷制度を認めていた時代は、人間を物と同じように扱うことが法的に可能でしたが、今の日本の法律では不可能です。)。


 今、自分が手にしている権利が所有権なのか、占有権なのかによって、どのような裁判をするのかも変わってきます。

 所有権や占有権を侵害された場合には、弁護士にご相談ください。