後見制度を利用する前のチェックポイント

 成年後見制度を利用しようとした場合,その旨を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
 では,誰であっても成年後見制度の申立てをできるのかというと,それは違います。
 

 成年後見制度は,判断能力が低下した人を守るための制度であるため,判断能力が低下した人と近しい人のみが,申立てをすることができます。
 

 具体的には,判断能力が低下した本人,配偶者,4親等内の親族などです(その他細かい例外はあります)。
 
 4親等内の親族とは,判断能力が低下した人の両親,子,兄弟,伯父,叔母,従兄弟などが該当します。
 
 次に,後見人(判断能力が低下した人をサポートする人)になる場合にも,一定の条件を満たす必要があります。
 まず,未成年者は後見人になることができません。
 
 次に,破産した人や行方不明の人も後見人になることはできません。
 
 後見人は,判断能力が低下した人を守り,安心して暮らせるようにするための環境を整備する責務があるため,その責務を十分にまっとうできる人でないといけないためです。
 
 裁判所の方針として,後見人は家族がなるべきとされていますが,法律上はそのような制限はなく,法律の専門家が後見人になることもよくあります。
 
 
 成年後見制度の利用を検討されている方は,誰が申立てをするのか,誰が後見人になるのかといったことについて,事前に弁護士に相談して,今後のプランを考えることをお勧めします。

成年後見制度の概要

 成年後見制度は,認知症等の理由で,判断能力が低下した人を保護するための制度です。

 たとえば,判断能力が低下した人をターゲットに,「名古屋の土地は絶対値上がりするから,今のうちに買っておくとお得ですよ」等と言って,不動産を買わせようとしてくる業者がいるかもしれません。
 
 そのような悪徳業者から,判断能力が低下した人を守る必要があります。
 
 また,体が不自由になると,施設に入所するための契約等を行うことがありますが,判断能力が低下すると,そういった契約ができない可能性があります。

 
 そういった場合に,判断能力が低下した人を助けるための制度が成年後見制度です。
 
 先程の具体例では,成年後見人になった人が,不要な不動産を交わされた場合に,その契約を取り消したり,判断能力が低下した人の代わりに施設に入所する契約を締結したりできます。
 
 成年後見制度には具体的に3つのパターンがあります。
 一つ目は,判断能力が低下した人を全面的にサポートする「後見」制度です。
 
 後見人は,判断能力がかなり低下した状態が長く続いている人の代わりに,様々な活動を行います(たとえば,寝たきりで意識がない人や,重度の認知症で家族の顔や名前が分からないような場合に後見人がつきます)。
 
 二つ目は,「保佐」制度です。
 
 保佐制度は,後見人が就く必要があるほどには,判断能力が低下していない場合に,利用されます。
 三つ目に「補助」制度があります。
 
 補助制度は,保佐人が就く場合より,さらに判断能力が低下していない場合に利用されます。
 
 成年後見制度は,ご家族の判断能力の程度に合わせて,適切な判断が必要になりますので,成年後見制度の利用を検討されている方は,弁護士にご相談ください。