否認権行使が予想される場合に免責されるか

 否認権という言葉は、破産法上で使用される独自の言葉ですので、あまり聞きなれない方が多いかもしれません。

 簡単に言いますと、破産手続きをするにあたって、不当に減ってしまった財産を取り戻すことを、否認権の行使と言います。

 たとえば、これから破産をしようと考えている人が、友人に300万円を贈与したという場合を考えてみます。

 破産手続きを行う場合、基本的に、破産する方の財産を、債権者に分配しなければなりません。

 とすると、友人にあげた300万円というものも、本来的には、破産手続きの中で、債権者に分配することになります。

 しかし、「友人に贈与したので、お金はありません」という話になれば、債権者の権利を害してしまうことになります。

 そこで、友人に贈与した行為を取り消すための権限が、否認権と呼ばれるものです。

 この否認権が行使されるようなことをしてしまった場合、その行為自体が免責不許可事由とされているため、免責(借金の免除)が認められない可能性が出てきます。

 もっとも、否認権を行使されてしまう行為をしたとしても、必ず免責が不許可になるわけではありませんので、破産手続きをあきらめる必要はありません。

 破産手続きを依頼する弁護士に対し、どのような経緯で、どのような行為をしてしまったのかを説明し、裁判所に対し誠実な回答をすることで、免責が認められる可能性も十分にあります。

 一番問題なのは、否認権行使の対象になり得る行為を隠してしまうことですので、しっかりと説明をすることが大切です。